衰ひや 歯に喰ひ当てし 海苔の砂(おとろいや はにくいあてし のりのすな)
松尾芭蕉
江戸時代の俳人・松尾芭蕉が48歳の時に詠んだ句です。
当時の海苔は砂が交じっているものが多く、
食べるとよく砂粒に当たっていたとされています。
海苔を食べていた時にジャリッと砂粒を噛んでしまう。
若い頃ならば、口の中からペッと吐き出せばそれで終わりですが、
年齢を重ねるとそうもいかない。
ジャリッと噛んだ砂粒はミシッと歯茎に食い込むような感じがして、
時には痛みが走ることも。
その瞬間に身体の衰えを感じ、ほんのり暗い気持ちになる。
この句はそんな老いへの憂いを詠んだ句だそうです。
誰でも年齢を重ねると、日常の一瞬で老いを感じてがっかりすることがあると思います。
そんな日常の一瞬を切り取って簡潔に表現しているあたり、
さすが芭蕉だと感服する思いです。
この句で詠まれている歯の老化現象は、
歯周病が原因ではないかといわれています。
歯周病は、歯肉が炎症を起こすことで歯を支える骨などを溶かしてしまう病気で、
加齢とともに患者が増える傾向にあります。
昨今では全身にも悪い影響をおよぼし、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病、
骨粗しょう症といった様々な病気を招く原因になることがわかってきたそうです。
全身の健康を保つためにも歯周病を防ぎ、歯の老化予防に努めたいと思うこのごろです。
ここ数日で、気候がすっかり秋めいてきました。
寒暖差によって体調を崩さないよう、お出かけの際は羽織ものを忘れずに。
お健やかにお過ごしください。
久郷直子