『枕草子(清少納言・著)』でも描かれているように、
秋の夕暮れは何とも趣のある時間です。
商店街や住宅街など、いつもの何気ない風景でさえ絵になり、
ノスタルジックな気分に浸れます。
この句は「秋の夕暮れ時。周囲が少しずつ暗くなっていく中で、
辻のお地蔵さんの灯明に油をつぎ足していく」様子を詠んだもの。
蕪村が生きた江戸時代、灯明は暗い夜道を照らす貴重なものの1つでした。
茜色に染まった空が、だんだんと暗くなっていく。
その中で、灯明の火が消えてしまわないよう、
蕪村はいそいそと油を足していったのでしょう。
もしかすると、灯明の皿に油を足すことで、
秋の夕暮れ時に感じる寂しさや物悲しさを紛らわせていたのかもしれません。
いつもと違う街の様子を楽しんだり、遠い昔の秋の情景を懐かしんだりと、
秋の夕暮れの楽しみ方は実にさまざま。
皆様もぜひ、この時季ならではの情緒ある風景を存分に味わってください。
久郷直子