昼間は暑いものの、
朝夕の涼風が心地よいこのころ、
咲き誇るコスモスが似合う季節です。
ひらひら風になびくコスモス。
その細い茎に、透けるような花びらは可憐!
コスモスの鑑賞は、この季節の楽しみでもあります。
でも、この頃はちょうど二百二十日(ニヒャクハツカ)があります。
二百二十日とは、季節の移り変わりを示す雑節の1つ。
立春から数えて220日目であることから、二百二十日と呼ばれています。
この日は、二百十日(ニヒャクトオカ)と合わせて、
台風に見舞われる厄日とされており、
日本各地で農作物を風害から守るために
神様に祈願する「風祭り」が行われます。
台風と聞くと「弱々しいコスモスが、
ぽっきり折れてしまうのではないか」と心配になります。
しかし、コスモスは案外強い植物なのです。
私は、そのことを小学生のころに知りました。
花壇いっぱいに咲いていたコスモスが
大雨と暴風によってなぎ倒されました。
茎は地を這うように倒れ、
その先についた花も泥がかぶっていました。
けれども、暴風雨が止んで青空が広がると、
倒れていたコスモスが、ぐっと頭を持ち上げ、
嵐の前と少しも変わらない様子で、
ヒラヒラと空を見上げているのです。
コスモスについて、
歌人・与謝野晶子がこんな歌を読んでいます。
<コスモス>
一本のコスモスが笑つてゐる。
その上に、どつしりと
太陽が腰を掛けてゐる。
そして、きやしやなコスモスの花が
なぜか、少しも撓(たわ)まない、
その太陽の重味に。
紫式部や清少納言以上の才媛といわれた晶子は、
与謝野鉄幹との結婚後、多くの子をもうけながら
様々な詩歌を世に送り出しました。
そんな晶子もまた、
力強くすっと空を仰ぐコスモスを見たのでしょう。
「弱々しく疲れて見えても、いざという時、とても強い…」
晶子は、コスモスにそんなイメージを持っていたのかもしれませんね。
久郷直子